8月8日、朝5時20分頃だったと思う。東京に……と言うより、ウチの近所に虹がかかった。

その頃の僕は、今回のCDジャケット撮影を終えたばかりで連日デザイン作業に没頭していたのだけれど、種ちゃんのエッセイ(11月発売の種ともこデビュー20周年記念ブック『ウタイツガレルウタ CHRONICLE』所収)に影響されたのか、きわめてきちんとした??別の見方をするとまるでお年寄りのような??早起き生活を送っていて、その日も5時前に目を覚まし、5時過ぎには玄関前で目覚めの一服をしていたのだった。

普段は滅多に見ることのない、家の西側にふと目をやる。夕方でもないのに西の空が光で満ちている気配がし、何気なく目をやったその軒と軒の間には巨大な虹の根が、ほとんど垂直に屹立していた。思わず門を開けて道路へ飛び出し、虹の全貌をつかむべく十字路の真ん中に立って西の空を仰ぎ見ると、僕がこれまでに見た中で最も巨大かと思われるアーチが金色に輝く住宅街を跨いでいる。夜半から降ったりやんだりを繰り返した強い雨が西へ延びる道路一面を濡らし、何の変哲もない見慣れた住宅街や電柱群をハリウッド映画のようにくっきりと浮き立たせている。職業病と言おうか、あるいはホントにおじいちゃんみたい、と言おうか、僕は家の中にとって返し、カメラを掴んで今いちど外へ出た。十字路に突如駆け出たちょうどそこへ、宮藤官九郎似のライダーのバイクが右折して来、あっ、すみませんと小さく言うと向こうもスイマセンと返してくれて事なきを得たものの、ふたたびカメラを構えたときには既に虹の半分が消えていた。消えてはいたけれど、いかにそれが巨大だったのかを示すに足る七色の脚を僕はカメラに収めることができた。

虹を眺める人はみな幸せそうな顔をしている??もっともらしくそんなことを呟きながら僕は、先ほどぶつかりそうになったライダーが西へ延びる道路の向こうでバイクを止め携帯電話を取り出して空に向けている後ろ姿を、虹と一緒にもういちどカメラに収めた。

なかなか清々しい気分で仕事部屋へ行き、CDに収録されている「The Rainbow Song〜虹の女神〜」を聴く。そしてこの素敵な音楽をカバーするのに最も相応しい写真だと思われる一枚を選ぶ。

(外間隆史)