『Love Song Remains The Same』ハイレゾ音楽配信記念 座談会
2015年10月発売の種ともこの最新アルバム『Love Song Remains The Same』のハイレゾ音楽配信(96kHz/24bit)が1月27日から始まりました。
デビュー30周年イヤー企画の第一弾、さらにキャリア初となるハイレゾ配信を記念して、種ともこ本人と同作品をともに作り上げた共同プロデューサーの菅原弘明、ミキシング・エンジニアの松本大英両氏がCDとハイレゾ音源とを聴き比べながら行った座談会の模様をここに掲載致します。
なお、当日は収録曲をCD→ハイレゾの順番で試聴し、1曲ごとにその感想を3人に語ってもらいました。
既にCDでお楽しみ頂いている皆さんにも、さらに踏み込んだ音楽の楽しみ方の一つとしてご興味をお持ち頂くきっかけになれば幸いです。
出席:
種ともこ
菅原弘明(『Love Song Remains The Same』共同プロデューサー)
松本大英(『Love Song Remains The Same』ミキシング・エンジニア)
日時/場所:
2016年1月10日 三軒茶屋・STUDIO BLAN(協力:大城歳礼)
再生機:
AK380+CRADLE
協力:株式会社アユート
http://www.iriver.jp/products/product_112.php
Monitor Selector Current CSP349
Speaker musikelectronics geithain RL901K
M1 Love Song Remains The Same
M2 三日月
菅原: ハイレゾだと奥行きを感じましたね。「Love Song…」はアコギも歌も臨場感があって、アコギの弦が爪に当たる感じが聴こえるかな、と。リップ・ノイズも生々しくていいですね。あと、コーラスの立ち位置がすごく分かる。
種:それはあるかも。
菅原:「三日月」は別もののようにハイレゾの方がいいような気がしちゃうんだよね。
種:最後の方、音がいっぱい入ってるところとか、CDだと歪みが増えて来ると歌も一緒に歪んでるみたいに聴こえるけど、ハイレゾではそういう感じがないな。
菅原:固まってたのが、分離して聴こえる感じ。
種:あと、ベースラインが見えやすかったかな。
松本:そうですね。低域がかなり違いますね。
菅原:重心が下がってるんですね。すごく繊細に楽器が重なってて、お互いが絶妙に絡み合ってるのが、ハイレゾだとちゃんと再現されてるんだけど、CDだと倍音が抜けてるせいか、聴こえてないところがあるから、絡み合いが何かね…。
松本:高域にも余裕が出てる感じがしましたよね。
種:あと、最後のブレイクでディレイが飛ぶじゃないですか。あれがちゃんと聴こえて次につながるんですよね。CDだと一瞬あそこで音が消えてギターが始まるから、リズムが切れる気がしたんですけど、ハイレゾだとそう感じなかった。
M-3 Two of us
菅原:いい曲だね…(笑)。これはすごく分かりやすいですね。入ってる音が全部分かるしね。まず歌が違いますね。
松本:歌のてっぺんがすごく気持ちいいですね。
種:始まった瞬間に違うってことですね。とにかく、減衰して行く音のバランスでアレンジが組立ててあるじゃないですか。そのアレンジの意図がハイレゾの方が見えるっていうのがあるんじゃないですか。一方の音が沈んで行って、別の音が出てくるっていうようなのが…その境いめがCDだとちょっと分かりづらいけれども、そこがすごく見えるから、綺麗に聴こえますよね。
菅原:そうですね。寄せては返す感じが再現されてますよね。あと、ベースが粘っこく感じるね。
松本:そうですね。
M-4 謝んなさいよ
菅原:ハイレゾの方がレンジは広いけど、なぜかCDの方がポップに聴こえるな、と思ったんだよね、この曲に関しては。
種:あぁ、分かる。
松本:ギュッと固まった感じがあるから…最初、CDの方が曲に合ってるかな、って思いましたけど、サビとかで、プレイヤーがそれぞれいろんなことをやり出すと、その交わりがハイレゾはすごくいいんですよね。ミュージシャン好きにはたまらないっていうか(笑)。
種:確かに。最初聴いた時は、CDの方がいいな、って思ったんだけどね。でも…やっぱり低音なのかな?低音は圧倒的にハイレゾの方がいいから…ベースの音色をよく伝えてるから。
松本:そうですね。グルーヴが激しくなるほど見えるっていうか、伝わる感じはしますね。
菅原:これは箱もののギターだったんだけど、それがよく分かるね。ハイレゾの方が。
種:本当に「ザ・大英ミックス」って感じがしましたね。素晴らしい。
M5 Still in love with you
菅原:これはもう、全然違うね。ハイレゾの方が、曲が丸い感じがしましたね。女性らしい、っていうか…。バランスもよく感じるし、倍音のせいか分かんないんだけど、音がみんな、ハーモニーがきっちり整ってるように感じるんだよね。
種:そうですね。バラードはやっぱり…ピアノの音質が違うと歌も随分違ってるような気がしますよね。
M-6 ヒミツを守れる人
菅原:ハイレゾの方がヴィヴィッドな感じがしましたね。
種:不思議なドラムだなぁ、と思って聴いてて(笑)。
菅原:ハイレゾの方が粒立ちがハッキリしてるから、勢いよく聴こえるっていうのかな。
松本:そうですね。ドラムのクレイジーさもすごく分かるっていうか…奥行きも出るんですね、やっぱり。
種:ベースが違う人だから低音の響き方も違うね。
松本:なるほど。そういうことも見えるわけですね。
菅原:ミュージシャンの個性がハッキリ分かる的な…恐ろしい。
M-7 引越通知なし
菅原:ハイレゾが断然いい。フレーズが分かるからね。楽しい感じがしますよ。ギターの音も全然違うなぁ。
種:多分、いろんなものの奥にいるから、CDだと左右されるじゃないですか。それがちゃんと単独で聴こえて来るから。ギターが一番違って聴こえたかな、私も。
菅原:音色がすごく良かったな。
松本:音色がグルーヴを呼ぶ、っていうか…グルーヴィに聴こえましたね。
菅原:ギター・ソロの音色がすごい良くて。CDだと、何かちょっとカスッてるのかな?って思ったけど、ハイレゾで聴いたら、「あっ!すごくいい!」みたいな感じで…カッコよかったなぁ。
M-8 Onkalo
菅原:最初のアコギと歌のところがすごくよかったよね、ハイレゾの方が。あと、この曲って、シンセの音色とかも吟味して入れてるんですけど、それが分かって、不気味さが増してよかった。あと、マニアックなリヴァーブ感も見えたから…。
松本:そうですね。雰囲気っていうか、音楽的なところが。
菅原:音色とかにすごく気をつけて作った曲には、やっぱりハイレゾの解像度はいいですよね。
松本:ありがたい!って感じですよね(笑)。ドラムがバッと入って来たところなんか、CDでも、カッコいいなこれ、って思ったんですけど、ハイレゾ聴くと、その解像度のよさで全てが見えるっていうか…さすが!っていうか。
種:これはもうアレンジがいいですよね!
菅原:ありがとうございます。ライヴで演りたいなって…(笑)。
種:頑張ります!すみません、本当に(笑)。
M-9 ずっとね
菅原:いいですね、やっぱり。真ん中の「ランラランラ…」の部分がすごく違って聴こえた…何だろう?
種:ギターの倍音なんじゃないですかね。ギターがすごく聴こえてるから、それがキラキラ…ってなってる感じが。
菅原:そうだね。
種:あと、やっぱりスネアの音が違うっていうのは思いましたけど。
菅原:CDだとちょっと膜がかかってる…っていうか、コンプがかかったような印象だったのが上に伸びてるからかな。
種:倍音がよく聴こえてる感じがする。
菅原:あと、この曲って、いろんなニュアンスで歌ってるじゃないですか。それが分かるな、って思いましたね。
松本:いいアレンジ。
菅原:ライヴだともうちょっと遅いんですよ。このテンポだとアルペジオ弾くのがすごく大変で…でも、ほぼ弾けてたからよかった(笑)。
M-10 岩手山
菅原:全体的に艶っぽい印象があるな。歌がまず、一発目の飛び出しが速い。あと、シンバルのタッチが綺麗ですよね。
種:バシャバシャしないからいいですよね。何か、ピアノのいろんなところが気になっちゃって…(笑)。ライヴで演ってる間に違うふうに弾いてるところが結構あって、それもさっきからチェックしてたんですけど…いろんな曲で。
菅原:俺も勘違いしてるフレーズが多い(笑)。
種:やっぱり(笑)!「アッ!」っていうのが結構あった。
菅原:弦もすごくよかった。ふくよかさが違う。
松本:この曲はハイレゾのよさが感じられる音が次から次に出て来るから。最初のピアノから、シンバル、弦が来て…。
菅原:この曲は一番ヴィジュアルを考えながらアレンジしたんですよ。だから、風景がこう来て、そこに雲雀が、って歌詞が来たら場面をちょっと変えるとか、そういうことを考えながらやってたんだけど、その意図がちゃんと見えてるな、と。
松本:映像的ですよね。
菅原:そう、映像的に作ったのが、さらに映像的に再現されてるな、という印象ですよ。
M-11 愛と恋のためにココロはある
菅原:低音感の違いが…柔らかく感じる、
種:あと、フェイザーが…これがやりたかったんだっていう気がするな。CDだとちょっとガサツな感じがして。
菅原:多幸感がね。
種:静かな広がりがありますね…狙ってたのはこれだ、って感じ。
松本:そうですね。CDを聴いてる時はフェイズって変わるのかな?って思ってたけど、変わりますね、やっぱり(笑)。全然違いましたね。
菅原:きめ細かいからかな。
松本:ウネりも細かく解像されて、流れもハッキリ、滑らかに見えるんですよね。あと、ベースが違うから、そこに乗るフェイザーも違うんですね。
菅原:CDだとベースの減衰が速いような気がするんだけど、こっちは解像度が高いせいか…。
松本:フレーズのニュアンスまで見える気がしますね。
種:相当違うな、これは。
菅原:最後の恋愛原理主義的なフェイザーも含めていい感じになってました(笑)。
総評
菅原:本当に制作側の意図がちゃんと再現されてますよね。特に音数の多いアレンジの場合は、微妙に絡み合うようにすごく練って作ってるんだけど、それが再現されてないと、何か音が多いね、ってことで終わっちゃう恐れがあるな、って…CDだとちょっと感じたね。ハイレゾで聴くと、こう絡んで、こういう意味があるんだ、って伝わるように思いましたね。全体的にやっぱりハイレゾの方が勝ってはいるんだけど、ただ「謝んなさいよ」はちょっとザラッと、ローファイな音を志向してるから、CDも悪くなかった。
松本:CDで聴いて、曲がいいっていうことは最初に伝わるんだけど、ハイレゾと聴き比べると、広がりや膨らみっていう、いい面ばかりが目立ちますよね。
種:今回、録音から96kHzだったから、ストレス・フリーでしたよね、いろんな意味で。全てが速かったから。それは音作りで悩む時間があんまりなかったってことじゃないですか。
菅原:あんまり悩まず、電車道のように(笑)。
種:CDを買った人もダウンロードして聴く価値は十分ありますね。
松本:iTunes Storeからもダウンロードして欲しいですけど…いろんな環境で聴き比べるのもまた楽しい。それぞれ楽しみ方があるんですよね。
菅原:CDで聴くと、曲のよさとかがすぐに伝わると思うんだけど、ハイレゾだと、曲のよさ以外にも、歌のよさだとか、声のよさだとか、音質のよさだとか、音の質感とか…。
種:世界観とかですかね。
菅原:そうだね。楽器のプレイとかアレンジの細かいところまですごく分かるな、っていうか…。
松本:家のテレビで観る映画と、映画館で観る映画と…それほどの差って言っていいのか分からないけど…。
種:でも、そういうことじゃないですか。
松本:じゃあ、iTunesはスマホで観る感じですか(笑)。脚本のよさは分かるけど、何をしたかったかは…みたいな(笑)。
種:そういうこと。今、めちゃくちゃいいこと言いましたね!そうそう。スマホと家のテレビと映画館。それぞれ楽しみ方はあるけど、こうやって聴くとなかなか戻りにくいですね。
菅原:現状は聴く方法が周知されてないのが悩ましいところだね。配信だけでなく、ポピュラーなパッケージとかとして、より広いユーザーに触れ合える機会を持ってもらうにはどうしたらいいか、まだまだ課題はありそうだね。
構成:種ともこスタッフ
主なハイレゾ配信サイト:
mora http://mora.jp/package/43000011/4538182602287_F/?fmid=newRelease_hrs_0001
e-onkyo music http://www.e-onkyo.com/music/album/bud4538182602287/
VICTOR STUDIO HD-Music http://hd-music.info/album.cgi/8842